本研究は、年齢も特性も異なる児童生徒を対象に、指導者とのコミュニケーションギャップ解消に向けて取り組んだ2つの事例研究である。
<研究Ⅰ>
対象:昨年度担任した小学部重複障害学級に在籍する児童
指導者の受信行動の改善と、生活の中で児童が選択する機会を設定することで、表出言語の増加、不適切な行動の減少が見られた。
<研究Ⅱ>
対象:今年度担任した高等部普通学級に在籍する生徒
昨年度の取組から得られた知見を基に取組を行った。実態は異なるものの、受信行動の改善と、選択の機会を設定することで、日常生活の場面での大きな改善が見られた。
2つの事例研究を通して、指導者の受信行動の改善は、相互の信頼関係構築につながることが認められた。その際、対象となる児童・生徒の行動だけに着目せず、周囲の環境や行動の前後に見られる状況の変化との関連性を把握することが、その行動の意図や機能の正確な読み取りにつながることが分かった。また、日常生活における選択の機会を通して、児童生徒は発信意欲を高めるとともに、コミュニケーションスキルの獲得、さらにはQOL(QualityOfLife:生活の質)の向上へとつながることが明らかとなった。