生徒の科学的な概念の形成にあたっては、興味・関心を高める課題提示や事象の観察によって問題を見いだし、生徒が能動的に取り組むことが重要である。生徒の能動的な取組は、継続して意欲をもち続けることで効果的に問題解決に必要な資質・能力を獲得しながら概念の形成を図ることが期待できる。
これは、国立教育政策研究所が示す「21世紀型能力」の育成に大きく関わると考える。しかし、理科が苦手な生徒にとって、自ら問題を見い出し解決を図る学習はやや抵抗がある。そこで、本研究ではアクティブラーニングの考えを基に、以下の4点を指導過程に導入する。これにより、どの生徒にとっても能動的な取組を可能にし、概念形成を図ることを狙った。
1 単元を貫く課題の設定
「化学電池はどうして電気を起こすことができるのだろうか」を明らかにすることを単元の課題に設定し、最後まで目的に向かって学習できる学習過程を保証した。
2 イメージマップによる問題解決の過程の視覚化
単元導入時に提示した現象から、化学電池の仕組みの解明に必要と考えられる実験や疑問をイメージマップの形式で記録させた。個々のイメージマップは、班で集約することで精選され、実験計画も具体的に立てることができる。実験によって明らかになったことや新たな疑問を書き足していくことで、各グループの進捗状況を確認し、情報を学級全体で共有することができる。単元の学習中は常に理科室に掲示し、いつでも誰でも見ることができるようにした。
3 実験の複線化と情報の共有
観察・実験の方法は、自由度をもたせて各班で検討させた。その際、他の班の生徒と意見交換をする機会を設定することで新たな視点に気付き、班で再検討する必要性を醸成する。結果についても同様な機会を設定した。
4 時間の保証による連続した問題解決の過程
一年間を通して50分×2の2コマ連続した時間割で理科の授業を行った。このことによって、生徒は一つの実験について予想・仮説を基に計画を立て、実験を行い、結果を整理、考察し、結論を導出することができ、生徒の意識が途切れることなく解決へと向かうことができる。
本研究では、これらの手立てが粒子概念の形成に有効であったかを検討する。また、他単元へ汎用化できるよう研究を進めたい。