私は算数の授業で数学的な考え方を高めることを特に大切にしている。数学的な考え方を高めることによって、計算の答えを導くだけでなく、どうしてその答えになるのかという意味を理解することができるからである。
児童の学びは多様であり、すべての児童が同じ学び方をしているわけではない。児童によって、どの言葉が心に残り、どの言葉によって学びが確かなものになったのか違いがある。そこで、本時で深めた見方や考え方、また、新たに知り得た方法について再構築しながら、その時間の学びを自分の言葉で書き表すことで、数学的な考え方を高めていくことができると考えた。
書くことで思考力を働かせ、またそれを表現することで数学的な考え方も高まっていく。しかし、答えを求めることができても、思考の過程をうまく表現できず、数学的根拠に基づいていない解法を書く児童もいる。そこで、次の2つの手立てを行ったあと、解法を自分の言葉で書かせた。
1つ目の手立ては、「多様な考えの共通点や相違点を明確にする話合い」を授業場面に取り入れたことである。児童の中から出てきた考えの共通点や相違点を問う発問をすることで数学的根拠を明確にすることができると考えた。
2つ目の手立ては、「解法を書くときのキーワードとなる言葉の提示」である。1つ目の手立ての話し合いで出てきたキーワード(数学的根拠)を板書しておくことで、解法を自分の言葉で書けるようにした。
本実践の結果、多数の児童が解法を自分の言葉で書くことができた。解法を記述したノートを分析すると、自力解決できなかった児童が、授業終末では数学的根拠に基づいて解法を書くことができた姿が見られた。また、ある児童は、自力解決した考え以外の考え方も取り入れ、自分の考えを再構築して解法を書いていた。また、児童の中には同じ数学的根拠に基づいて解法を書いたものもあったが、各自が自分にとって理解しやすい言葉で書いている記述がみられた。
よって、本実践では、解法を書かせるために2つの手立てを行い、数学的な根拠を明確にしてから自分の言葉で書かせたことで、数学的な考え方を高めることができた。