図画工作科の絵画題材において,児童が「こんなふうにかきたい」という思いをもった時,あらかじめ多様な表現方法を習得していれば,それを表すのにふさわしい方法を自ら考え,選んだり組み合わせたりして表現することができるだろう。
しかし,単に多様な表現方法のみを取り立てて教えたり,表現に必要な技術や用具の使い方を繰り返し練習させたりすることは,児童の自由な発想や表現の意欲を減退させてしまう。また,思いを表現するための技法であるはずが,技法のみが取り上げられることで,見た目の巧みな作品が良いとされ,図画工作に対する苦手意識を児童にもたせることにつながりかねない。
これらの課題を克服し,児童が自分の思いを表現できるようにするためには,以下のような題材を年間指導計画に意図的に配置し,それらをつなぐ環境を整えることが必要であると考えた。
一つは作品製作をしながら多様な技法を楽しんで学んだり,用具の使い方に慣れたりする題材(「基本題材」)。もう一つは,学んだことを生かしたり更に発展させたりして表現する題材(「活用題材」)である。今回は,「人物をモデル人形として使ったり,楕円で描いたりする題材」,「モダンテクニックを使った彩色で色紙を作る題材」,「筆を使った様々な彩色で塗り絵をする題材」の3つの「基本題材」を行った。これらを,「活用題材」(自分を主人公にしてわくわくドキドキした瞬間をかく絵画題材)とつなぐ掲示物や用具を用意した。
「活用題材」では,「基本題材」で多様な技法を学んだり,用具の使い方に慣れたりすることで,表現方法を選んだり組み合わせたりしながら製作する児童の姿が多く見られた。また,題材を結びつきを考えて配置したり題材同士をつなぐ環境を整えたりしたことで,自分の思いにあった表現ができたと考える児童が多くなった。これらのことから,手立てが児童が自分の思いを表現することに有効であったと考える。