学習指導要領では,児童の感覚や感じ方などを一層重視することを明確にするために,「感性を働かせながら」という文言を示している。「感性」は,様々な対象や事象を心に感じ取る働きであるとともに,知性と一体化して創造性をはぐくむ重要なものである。そして「豊かに表現する姿」とは,自分自身の様々な感覚を大切にして想像を巡らせて作品をつくる姿と考える。
これまでの私の授業では,子どもは「与えられた課題」をもとに作品づくりをしていた。そのため,何をつくるか決められない姿や,どうつくったらいいか分からなくて,つくるものを変更する姿が見られた。そこで,子どもが主体的に課題を見付けるような姿や,他者のよいところを認めながら,自分の見方を広げ,自分に自信をもって表現していく姿を目指し,表現および鑑賞の領域で次のような手立てを講じて,実践を行った。
1 問いを子どもから引き出すための手立てを設定する。
教師の手立てによって,子どもは感覚を刺激されてイメージをもち,感じたことをつぶやく。そのつぶやきを教師が取り上げて共有化し,全体での活動に広げていく。これを「子どもが問い(学習課題を追究しようとする思い)をもつ姿」と位置付けた。既習とのズレや友達との考え方のズレを与えたり,材料に浸らせる時間を確保したり,仕組みを提示したりすることで,つぶやきが問いにつながるような手立てを設定した。
2 目的を明確にした「かかわり」の場を設定する。
まずは,問いを引き出す手立てによって自分のイメージをもつ。その後に,友達からアイデアをもらったり,意見をもらったりする。自分が気付かなかった視点や自分との共通な視点に触れることで,イメージを広げたり,変更したり,確立したりする。たくさんのアイデアの中から選べるようにしたり,友達の意見を生かしてつくるような題材の設定をしたり,グループで意見をまとめるような課題を設定したりすることで,何のためにかかわるのかを明確にした活動を設定した。
また,活動の最後には,思考の足跡が残るようなワークシートに自分の思いをまとめることで,自分の見方や自分の表現に立ち返ることができるようにした。
これらの学習活動を行うことで,子どもたちは感性を働かせて主体的に活動するようになり,自分の思いを豊かに表現する姿が見られるようになった。