過去10年以上に渡り、様々な学校で創作の授業の研究を行ってきた。ある時はコンピュータを使ったり、ある時は鍵盤ハーモニカを使ったりした。リコーダーや歌、キーボード、箏を使ったこともあった。ただ、どのような手法をとったにせよ、実践後にいつもこのような疑問をもって授業を終えていた。
「はたして、生徒はこの授業を面白いと感じてくれただろうか」
その答えは、生徒の表情を見れば一目瞭然であった。音楽が得意な生徒の表情は、授業後に明るい表情を見せたこともあったが、音楽の苦手な生徒の表情はいつもさえなかった。「創作は難しい」という思いが、生徒にとっても私にとっても共通していた。
これでは駄目だと思った。たとえ一部の生徒がすごい旋律を作るような授業ができたとしても、音楽の苦手な生徒が創作に対して苦手意識をもつような授業では、授業を行う意味がないと思った。
そこで、研究主題を「音楽の苦手な生徒でも夢中になれる創作授業の研究」と題した。研究では、次の仮説を立てた。
○ 以下の4つの要件を満たした授業を行えば、生徒は楽しさを感じながら音楽をつくることができるだろう。
① 生徒自身が音楽づくりをすることに対する必要性を感じられる題材設定であること
② 生徒の音楽的技能に見合った学習課題が設定されてあること(生徒の実態に応じた学習課題であること)
③ 創作のプロセスが明確に提示されてあること
④ つくった音楽が仲間から承認される(かもしれない)場が設定されてあること
そこで、学校行事の「運動会」に着目して、題材設定を行い、次のようなねらいで実施した。
(1)題材名
「運動会の応援歌をつくろう」(3年生)
(2)題材のねらい
リズム、形式、強弱、速さなどの諸要素に着目して運動会の応援歌(作品)をつくる活動を通して、反復、変化、対称などの構成を工夫したり、表したいイメージと実際の作品とを互いに連動させながら表現を深めたりすることができる。