音楽科の授業では、「音や音楽を知覚し、そのよさや特質を感じ取り、思考・判断する力」の育成が重視されている。「よさや特質を感じ取り、思考・判断すること」とは、「音楽を形づくっている要素や仕組みの働きが生み出すよさや美しさを感じ取り、曲想にふさわしい表現を工夫していくこと」と考える。これが、音楽科において大切な「思考力」である。
私は、音楽科の授業において、子どもが思考・判断する力を高めることができるのは、曲想にふさわしい表現を目指して、仲間と共に試行錯誤するときであると考える。そこで、試行錯誤をするための具体的な活動として、「聴き比べ」「歌い試し」を授業の中に位置付けた。ここでは次のような活動を設定した。
①曲想にふさわしい表現を考え、自ら歌って試す。
②仲間と聴き合ってアドバイスし合う。
③全体に提案する。
④提案を受けて、全員で歌い、より効果的な表現を全員で追究していく。
このような活動を通して、自ら考え、判断する力が育つのではないかと考え、歌唱指導を中心とした授業実践を行い、その有効性を検証した。