学習指導要領解説理科編の改訂の基本的な考えとして,「科学的な見方や考え方,総合的なものの見方の育成」,「科学的な思考力,表現力の育成」が挙げられている。しかし,これらを達成しようとしたとき,子どもたちがもつ素朴概念が大きな弊害となっている現状がある。
そこで,素朴概念と科学概念が対立し,主張が対立するような課題を生徒に与え,その理由を根拠をもとに思考させる仮説実験型の授業を行った。
また,自らの考え(主張と理由)を表現する場を設定するが,表現することに重きが置かれがちで発表会にとどまってしまうことも課題であった。理科における表現力とは,あくまでも科学的な思考に基づいた自らの考えを表現することで培われるものと考える。たとえば,自分とは異なる考えに出会ったとき,どこが違うかを比較したり,その違いが生じる要因を分析したり,反論したりすることができる力である。
このように,考えが異なる生徒同士で互いの考えを検討するにあたって最も大切なことは,互いが互いの考えをきちんと理解することである。しかしながら,多くの生徒が言葉による説明だけでは理解しづらい現状がある。結果として,その後の検討がちぐはぐなやり取りになりがちである。
そこで,白新中学校理科部では,考えをチャート図(理由づけチャート)にして表現させている。主張とその理由を結び,その理由の根拠をつなぐことで,個々の生徒の考えが可視化されるのである。
子どもたちは,互いの考えを「理由づけチャート」を見ながら理解し,根拠と理由とのつながりに反論したり,理由の妥当性を検討したりしながら科学的な思考力と表現力を身につけていく。そして,この検討を経て,最終的に予想される結果を判断するのである。
本研究では,科学的な思考に基づいた検討を重ねながら,根拠とともに科学的な理由づけをして自らの主張を決定することで,「科学的な見方や考え方,総合的なものの見方の育成」,「科学的な思考力,表現力の育成」をねらう。