理科では,子どもの自然事象に対する素朴な考えをより客観性のある考えに高めることが求められている。そのためには,子どもが様々な根拠(事実や既有の知識)に着目し,自分のこれまでの考えを絶えず見直しながら事象を捉えることが重要である。
理科学習は一般的に,①自然事象とかかわる②問いをもつ③仮説を立てる④検証実験を行う⑤結論を導く,という展開が多くとられる。この,「③仮説を立てる」場面において,多くの子どもは印象的な根拠だけに着目して考えたり,発言力のある子どもの意見に安易に同調したりする傾向にあり,考えの交流を取り入れても考えを見直すまでには至らなかった。そのため,「④検証実験を行う」場面で,教師が有効な実験方法を提示し,実験結果に着目させたとしても,子どもは自分の考えを見直し,より客観性のある考えには高められなかったのである。つまり,調べたい,確かめたいという必要感がないままの検証実験だったのである。
そこで私は,「③仮説を立てる」場面において,自分の考えの確証と反証,相手の考えの確証と反証が書ける「マトリクス」を提示し,この表に考えを書かせたり,表を使って考えを交流させたりした。
「マトリクス」を提示し,この表に考えを書かせたり,表を使って考えを交流させたりしたことで,子どもは互いの考えを視覚的に把握することができた。さらにこのことは,様々な根拠に着目し自分の考えを見直すことにつながった。その後子どもは,検証実験で得た事実を基に,自分の考えを強化した。