理科の学習において、見えない世界を推論するためには、児童がイメージ図を描き、児童同士が関わりのある授業を進めることが重要であると考える。6年生「水溶液の性質」の単元において、「溶ける」と「混ざる」の違いについて課題を解決する場を設定し、話し合いをする。それをもとに、1枚目に描いたイメージ図を実験結果に合うように加筆・修正し、思考を深めたり広げたりして、見えない世界を推論する理科授業の構築を目指した。
そのために、2つの手立てを講じた。1つ目は、児童がイメージ図を描きやすくなるような手立てを講じる。目で見て変化の大きな事象を提示し「どうしてだろう」という問いを持たせる。また、児童の持っている生活体験などから溶けると混ざるの違いの基準を作った。既習事項を丁寧にもう一度実験をし、目に見えない世界をイメージ図で表現するために、児童のイメージをもたせる工夫をした。2つ目は、イメージ図を使い、見えない世界を可視化し、話し合いを通して、起きる事象について推論できるようにする。1枚目のイメージ図は1つ目の手立てを使い、児童はイメージ図を描くことができた。そして、ぺアや班の中で自分の考えを伝える中で、「自分は溶けると考えたけれども、隣の人は違う」「同じ溶けると考えたけれども、描いたイメージ図は違う」などの児童同士の中で考えのズレがあることに気付いた。そのズレを明確化するためにBTB溶液やリトマス紙、豆電球を使って実験をし、1枚目のイメージ図を加筆・修正をした。そうすると、児童は、自分の考えやイメージ図を変えたり、考えの矛盾に気付いたりする様子がワークシートより見られた。
このように、児童が起きている事象についてイメージをふくらませる方法を丁寧に扱いイメージ図を描くことができる素地を養うと、「溶ける」のイメージ図を描くことができた。また、児童同士で交流をすると自分の考えを深めたり、変容させたりすることができた。よって、見えない世界を可視化するために、イメージ図は有効であることが分かった。