学習指導要領では「歌詞の内容、曲想にふさわしい表現を工夫し、思いや意図をもって歌う力」の育成が求められている。「歌詞の内容や曲想にふさわしい表現を工夫する」こととは、リズムや強弱など音楽を形づくっている要素が生み出すよさ、面白さ、美しさなどを感じ取り、それらを生かした表現を自分なりの思いをもって創り出すことであると考える
私は、子どもが自分なりの表現を工夫する力を高めることができるのは、「これならこうしたい。」という見通しや方策をもったときであると考える。そのような見通しや方策をもたせるために、題材の中で「習得」し「活用」するという段階を追った学習過程を位置付けて指導する。音楽を形づくっている要素を「習得」で気付かせ感じ取らせ、手立てをもたせて「活用」で自らの表現の工夫に生かして考えさせる指導構成である。
音楽を特徴付けている要素や音楽の仕組みを聴き取り、そのよさなどを感じ取ることが〔共通事項〕として新設された。そこで、題材のねらいに照らしながら〔共通事項〕に示された音楽を形づくっている要素を焦点化した。そして、それを子どもに習得させることで、習得したことを手がかりにして自分で考え、表現を工夫していく子どもの育成を目指し、歌唱領域における授業実践を行い、その有効性を検討した。
本実践では、「習得」「活用」を以下のように捉えて実践した。
「習得」…学習前半において、知覚・感受や創意工夫の方策を自分のものとすること。
「活用」…学習後半において、前半で学んだ内容を利用して、表現を工夫すること。