1 大切にしていること
私の尊敬する先生が著書の中で以下のように述べている。
○教育の目的は、
「自分が良い人生を送るために、競争して他者に勝つこと」ではなく、
「他者の役に立つ人間になる。役に立つ人間になるために力をつけること」である。
他者の役に立つ人間になる過程に教育がある。
○教育の目的は、「自立」ではない。自立は前提にすぎない。
親依存から脱却して自立した後に、「協働」「高度な相互依存」がある!
自分一人だけでは成しえない目標を、仲間とともに助け合い、力を発揮し合って達成する。それでこそ、社会の中で力を発揮できる!どんなにいい仕事をする力をもっていても、他人と協力できなければ、力は活かせないし、目標は果たせない!言われなければ動けない人間でも困る。
私は、理屈ではなく、部活動の経験を通して、実践的な人間力が身に付くと確信している。いや、実践的な人間力を身に付けさせられる指導をすることだけを考えていると言った方がいいだろう。指導の「目的」は人間力向上。全国制覇は「目標」である。もちろんこれは、部活動に限った話ではない。教育における全場面において、私は「目的」と「目標」を大切にし、生徒に伝えるようにしている。
2 目標のもつ意味
「負けてもいいから思い切ってやってきなさい」と言う人がいる。「試合になんか勝てなくてもいい。勝負は時の運。」と言う人もいる。私は、そうは思わない。勝って勝って勝ち進む中でしか学べない経験がある。本気で勝利を目指すからこそ学べることがある。
本当に苦しい場面を乗り越えた者にのみ勝利は訪れる。だから、十分な準備をする。部活動以外の場面でも人間力を高めようと努力する。そして、試合中に幾度も修羅場を経験する。修羅場を乗り越えた者は自信と満足感を得る。準備の貴さを感じる。そして、大きな舞台で勝った時、今まで見えなかったものがより一層見えるようになる。私自身、昨年の夏に経験した。それまでの準備の意味を一層教えてくれるのが大舞台。
高校野球で言ったら、それがきっと甲子園。だから、甲子園を目指すことに意味があり、行くことにはもっと大きな意味があり、甲子園で勝ったらすごいことが学べるのだろう。
「時の運」をつかむチームは、部活動以外の場面を大切にしている。言い換えればしっかりと準備をしてきたチームということになる。だから、勝負は時の運と一言で片付けてしまうのは違う。勝負に屈した者は準備不足を痛感するが、負けて分かることはある。全国制覇をする1校を除けば、必ず負ける場面が訪れる。つまり、負けから学ぶことはいつだってできるのである。しかし、最初から負けることを許していたら、本気にはなれない。そこに勝つ意味があり、勝ちを目指す意味がある。だからまた「準備が大切だ」そして「目標が大切だ」と分かるのである。
私の目標は、常に頂点を目指すこと。結果を求めること。勝利を目指し、自分を見つめ自分を鍛えること。勝つためなら手段を選ばないのとは違う。人を蹴落としてでも勝つことでもない。
3 具体的な指導内容と選手の努力
前述した目的と目標そして準備。全国制覇を実現させるために、私は「勝てるチーム」と「負けないチーム」になる準備が必要だと思っている。つまり、勝つためには攻撃力。負けないためには守備力。そして、その2つを勝負の場面で実践できる人間力・精神力・体力を身に付けさせたいと私は考えている。そのために、私が選手に伝えていることや選手が積み重ねた努力のキーワードは以下の通りである。
(1) 人間力向上に向けて -普段がすべて-
(2) 冬を制する者は春夏を制す -徹底した下半身・体幹強化、基礎練習-
(3) 月曜日のミーティング -野球を考える時間=体を休める時間-
(4) 全員で戦うために - 一人にしない「常笑野球」 -
私は、この4つを柱にし、本当に多くの方々のご理解とご協力を得て指導をさせていただいている。今後も常に謙虚さを忘れず、選手とともに成長する指導者であり続ける。そして、夢に向けて全力を尽くす。
【参考文献】
「新潟明訓野球の秘密」佐藤和也