近年における情報通信技術(Information and Communication Technology:以下ICT)の進展は目覚ましく,スマートフォンやタブレット型端末などの情報端末が日常生活の中に溢れてきている。
教育界においても,総務省の「フューチャースクール推進事業」や文部科学省の「学びのイノベーション事業」を中心に,一人一台のタブレット型端末が児童に行き渡った環境における実証研究が繰り広げられてきた。
その効果は、授業の在り方自体に大きな変化を起こそうとしている。それは、コンピュータ室から普通教室へ、教師中心から児童中心へとシフトしたICTを活用する授業づくりである。具体的には、普通教室でタブレット型端末を活用する場面と方法を明確にした授業改善について探ることである。
着目したのは算数の教科書である。算数の教科書に登場する乗除法に関する学習内容と使用される図的表現について調べると,乗除法の計算においては,テープ図や線分図が学年を追って系統的に登場している。しかし,演算決定に苦手意識をもっており,これらの図的表現を有効に活用できていない児童は意外に多い。この理由を,教科書に出ている図的表現は完成された静止画であるからだと捉えてみた。
そこで本実践では、テープ図のデジタルコンテンツを作成し、学習者である児童自身が「式と図と操作とを結び付ける過程」をタブレット型端末上で経験することを通して,解決の手続きを学べるようにした。
その結果、動的なテープ図が演算決定の場で有効であるとともに、児童が数値の対応関係をつかみやすくなったことが分かった。今後、算数の教科書の図的表現を有効に学ばせるための手立てとして、どんな要件が必要かについて明らかにしていきたい。