新学習指導要領では,思考力・判断力・表現力が重視されている。本研究では,この3つの力の中から,特に思考力に着目し,研究を進めることにした。算数の授業において,子ども自身がICTを操作し,自分の考えを発表する過程を通して,子どもがかかわり合い,思考が深まっていくかどうか研究する。
子ども自身がICTを使って自分の考えを発表することにより,多くの子どもに視覚化して具体的に示すことが容易になる。ICTを使って自分の考えを発表するために,子どもは,課題について考え,式や図,表,グラフ,言葉で分かりやすく表現しようとする。聞き手の子どもは,ICTを使って示された考えに注目し,友達の考えのよさに気付いたり,自分の考えとの相違に気付いたりすることと考える。
これまで,授業におけるICT活用は,教師がICTを活用して指導する場合が多かった。新学習指導要領により,教育の情報化が挙げられる中,時代の要請から,子どもがICTを使って,お互いにかかわり合い,自分の考えを深める授業を目指すことが必要である。
4年生「2けたでわるわり算」では,黒板とICTを使った発表を子どもが選択できるようにした。大型TVと教材提示装置を使い,ワークシートに記述した子どもの考えを,自分で説明できるようにした。また,電子黒板とノートPCで,子どもの考えを発表できるようにした。子どもの考えを予想し,スマートノートブックで必要なパーツを作っておくことにより,子ども自身が電子黒板を操作して発表することができた。一部の発表については用意された適切なパーツがなく,授業中にその場で作成した。
友達の考えを全体で知る場面において情報機器を子ども自身が操作したことは,子どもの興味・関心を高めただけでなく,考えを共有化することにおいても有効であった。
また,全体で確かめる予定だった筆算については,ワークシートに筆算のアルゴリズムを説明している子どもがいたので,その子ども自身に電子黒板を使って説明させた。教師が一方的に説明するよりも,子どもの言葉でまとめることができた。聞き手の子どもから,「分かりやすい。」,「1けたのわり算のやり方と同じだ。」といった声が聞かれた。
本実践では,教材提示装置と電子黒板を子どもが使って発表することにより,アレイ図から商を求めるよりも筆算で商を求める方がより簡単で速いことに,多くの子どもが気付くことができた。今後の課題として,かかわり合いを活発にし,自分の考えを深めるために,友達の考えとの相違に気付くことができるような課題やICT活用の方法を工夫していく必要がある。