本研究は、文部科学省が作成した“Hi
,friends!”デジタル教材の電子紙芝居を用いて、学習者同士が協働して英語の物語の台詞を聞き取り英語劇を行う教育実践とその評価を行った。
「教育の情報化ビジョン」(文部科学省2011)において、主に教員が子どもたちに指導するためのデジタル教科書を指導者用デジタル教科書、主に子どもたちが個々の情報端末で学習するためのデジタル教科書を学習者用デジタル教科書として定義づけられた。指導者用デジタル教科書を活用することについては、多くの研究から学習者の理解度や楽しさ・満足度を高めることが明らかにされている。一方、学習者が主体的に活用する学習者用デジタル教科書についての研究や実践の報告は少なく、平成23年度から施行された小学校外国語活動においての活用に関する研究や実践はほとんど検討されていない。
以上のことにより、本研究は、小学校外国語活動において、学習者が主体的にデジタル教科書を活用する効果の検証を目的とした。なお、小学校外国語活動は各教科としての扱いではなく、文部科学省が作成した“Hi
,friends!”は教材扱いとなっている。しかし、全国の公立小学校の96%が“Hi
,friends!を活用しているという実態から、本研究では“Hi
,friends!を教科書として捉え、“Hi
,friends!”デジタル教材をデジタル教科書として定義する。
研究の方法として、調査対象を公立小学校6学年(35名)に、週に1単位時間の授業を3時間行った。学習単元は、『Hi
, friends! 2 Lesson7「We are good friends.」』を取り扱った。桃太郎の昔話を、英語やジェスチャーを用いて劇をすることが内容である。また、デジタル教科書は、デジタル教科書のデータをSDカードに移して、タブレット型端末で起動するようにした。
その結果、学習者は協働してデジタル教科書の電子紙芝居の英語を聞き取り、その英語をもとにして、劇を行った。発音については、ALT1名と中学校英語教諭2名から、適当であると評価された。また、林ら(2013)による外国語活動へのアンケート調査、ARCS動機づけモデルに基づくアンケート(松崎2008)により、5%の有意水準で優位に向上がみられた。したがって、学習者が主体的にデジタル教科書を活用することは、外国語活動における学習者の意欲を高めることが期待できることが明らかとなった。
【参考文献】
「小学校外国語活動におけるタブレット型端末の音声認識機能による翻訳活動に関する事例的研究」林俊行・水落芳明・桐生徹・神崎弘範 日本教育工学会論文誌
,36巻-Suppl,pp.45-48. 2013
「基礎的知識の定着と自己調整学習力を培うことを目的とした総合的な学習の時間の授業実践とその効果-ポートフォリオを教授ツールとして活用して-」松崎邦守 日本教育工学会論文誌
,32巻-Suppl,pp.149-152. 2008