当校は、障がいの特性上、人とうまく関わることができない生徒が多い。しかし、企業就労を目指すには、人と関わる「挨拶・報告・連絡・相談」の基本的なスキルは絶対必要である。そこで、人との関わりの場を意図的に設定し、場を意識した就労に必要な基本的なスキルを向上させたいと考える。
従業員56人以上の企業は、総従業員数の2%以上の障がい者を雇用することが法律で定められている。そのため、全国的にも障がい者の求職者数は過去最高を記録しており、就労ニーズへの対応が関係機関に求められている。しかし、新潟県の2012年の雇用率は、全国で41位1.59%と低い水準である。
改善のためには、事業主や行政の努力はもちろんであるが、事業主等のニーズに応じた力を学校で育成することも大切である。ニーズの中で一番多いのは、仕事の態度よりコミュニケーションに関することである。また、せっかく就労できても、勤続年数が全国平均6年10ヶ月という現実もある。この主な理由にも企業での対人関係がうまくいかなかったことがあげられている。
私は、人と関わる基本的なスキルであり、作業学習の中で行っている「あいさつ・報告・連絡・相談」を主に取り上げる。そして、これまでの指導の経過から問題点や課題を整理する。そこから、企業就労を目指す生徒に、「挨拶・報告・連絡・相談」がうまくできるための効果的な活動を工夫する。
大切なことは、生徒が自ら判断し会話することである。ともすると、活動に合わせたパターン化した言動が身に付くようになるが、もう一段階上の、場を意識して、相手を考えた関わりを少しでもできるようにさせたいと思い、以下の取組を行う。
①事前ミーティング・事後ミーティングで考える力を育てる。
これまで作業後の振り返りとして反省用紙に自己評価と感想を書かせて、相手にきちんと伝える力を育ててきた。その成果を基に、ミーティングで事前に見通し(めあて)を考えたり、事後に活動の振り返りを評価したり、活動をその場で考えて発表したりして、考える力を育てる。
②トラブルスキルカードを活用する。
作業場面では、いろいろなトラブルが生じる。そのために、トラブルを理解し、自ら判断し解決する力を育てることが大切である。そこで、「仕事で使う道具を壊してしまった。」「頼まれた仕事が時間内に終わらない。」など、生徒たちに想定されるトラブルを分かりやすいカードにする。そのカードを使ってロールプレイを行い、どのような行動をとるとよいか、また、どのように報告すればよいのかを考えて解決する力を育てる。