教育データベース

2013.09.26

中学校

算数・数学

中越

平成25年度

「数量関係」から「関数」への接続に関する考察

小千谷市立小千谷中学校 中澤 徹也

 小学校の算数では,第4学年から「数量関係」の学習がはじまる。このとき小学校では,二つの数量の関係を「一方が増えれば,もう一方も増える」,「一方が増えれば,もう一方は減る」というように共変関係を捉えることに力点をおいて,変化の特徴を読み取っている。ところが中学校になると,領域名が「関数」に変わる。そして,伴って変わる二つの数量については,「xの値を決めると,yの値も決まる」という対応関係を捉えることに力点が移り,関数が定義される。「xを決めると,yがただ1つ決まる」という関数の意味を理解し,小学校で学習した比例や反比例を関数の仲間と捉え直したり,関数関係を表現・考察の対象とすることを認知したりする。このようなギャップのある場面において,教師は授業でどのような指導を講じると,態度変更がスムーズにいくのか。本研究では、この態度変更に焦点を当てた。
 まずは態度変更によって生徒に身に付けさせたい力を次の4つにまとめた。
<関数の導入場面で生徒に身に付けさせたい関数概念の形成に関わる力>
ア 事象の中の2変量x,yを選択・抽出し,その順序性を捉えることができる。
イ xに具体的な数を当てはめて,対応するyの値を確認することができる。
ウ 関数の意味を理解しており,x-yの対応関係が関数かどうかを判断することができる。
エ 関数の変化や対応を対応表で分析し,解析の対象となるルールを発見しようとする。
そして,これらを育成するための手立てを3つ考え,中学1年「比例・反比例の導入」の場面で2時間扱いの授業を構想し,実践した。
手立て1
 日常的かつ操作的な活動によって起こる事象から2変量を抽出し,対応表を用いて考察する ナラバ ア,イの技能が高まる ダロウ
手立て2
 yはxの関数である対応関係と関数ではない対応関係(「not関数」とよぶ)を図式化し,関数関係の特徴を顕在化する ナラバ ウの判断力が高まる ダロウ
手立て3
 比例や反比例でない事象で,変化や対応に数学的ルールが潜在している事象を考察対象とする ナラバ エの態度が強化される ダロウ
 これらの有効性について,量的研究として生徒の評価問題の結果を分析し,質的研究として映像などによる授業記録や生徒の発話プロトコルに基づく,授業リフレクションを行った。
 その結果,本実践の対象クラスと非対象クラスでは,評価問題の正答率に大きな開きが認められるなど,手立て1と手立て2についてはその有効性が認められ,手立て3については改善の余地が認められた。
【参考文献】
学びの数学と数学の学び」金子忠雄 監修 井口浩 小田暢雄 風間寛司 星野将直 宮宏之 神林信之 明治図書 2002
「教えたくなる数学 学びたくなる数学」神林信之 風間寛司 星野将直 井口浩 小嶋修 渡部智和 考古堂 2012