私は,児童が社会的事象について深く考えたり理解したりしていくにあたり,その事象について「深く知りたい・調べたい」という追究意欲を強くもたせる必要があると考える。これが児童が単元を学習していく推進力となり,児童は思考力・判断力を自発的に駆使して学習を進めていくことにより,思考力・判断力を高めていくことができると考えた。
そこで,追究意欲をもたせるきっかけとして,児童の意識に「自分が当たり前と思っていたことがそうでない,不思議だ」と感じさせる『ずれ』を生むことが有効な手段であると考えた。そしてそれを,児童に強く印象付けるために,『ずれ』を生むための資料の提示方法を工夫することによってさらに効果的なものにすることができ,高い学習意欲のもとに個々の児童の思考力・判断力が駆使された授業・単元が展開できると考えた。そして研究仮説を「学習の導入時に比較資料を効果的に提示すると,児童の意識に『ずれ』を生み,思考力・判断力を高め単元をつらぬく問いをもたせることができる。」として実践を重ね,その有効性を検証してきた。
その後実践を重ねる中で,以下のような成果を得ることができた。
・教師が資料提示によって児童に問いをもたせたい場面で,教師が考える間を取りながら児童の根拠を資料から導き出させることにより,児童にもたせたい問いを児童自身に自覚させ表出させることができる。
・資料の提示の仕方や読み取り方を工夫することによって,児童の驚きが大きくなったり,児童から主体的に問いを表出させたりすることができる。
・児童に『ずれ』を生みたい場面で,まず児童が既習内容や生活経験をよく振り返る中で,それらと資料の示す事実がおおむね符合していることに納得し意識が安定したところに,それと相反する資料を示し納得を覆すことで,児童に大きな驚きを生み,学習への意欲を効果的に高めることができる。
・指導案作成時に授業が児童の思考の流れに合うように,今の児童の実態をよくとらえ,そこから資料提示・発問などの手だてをどうつなげていけば児童一人一人が問いをもてるかを考えることが大切である。(フローチャートなどの活用が有効)