本研究では、中心人物やクライマックスの検討を中心課題として位置付け、それが文学作品への生徒一人一人の読みの深まりにつながることを明らかにしようとした。「読みを深める」とは、話合いを通じて新たな視点を獲得し、その視点から自分の考えを再検討したり、考えを補強したりすることであると考えた。なお、実践では「中心人物」を「最も大きく変化した人物」、「クライマックス」を「中心人物の行動や考え方が最も大きく変化した場面」と定義した。
私の授業は、題材の内容の理解を促すための質問や解説が中心になりがちであった。文学作品の読み方、読みの深め方の学習指導という点で不十分であった。そこで、「生徒が自分なりの読みをもち、他の生徒の読みとの相違に着目しながら話し合い、自分の考えを深めたり、変容を自覚したりする授業」を目指し、次の手立てを講じた。
1 文学作品の構成の典型を学ぶ。
文学作品の構成(導入、展開、山場、終結)、設定(時、場所、人物、出来事)をとらえる。生徒が様々な文学作品と出会ったときに、自分の力で読むための土台となる。
2 中心人物やクライマックスの検討を中心課題とし、根拠を明確にしながら話し合う。
課題の解決に向けて、自他の読みや根拠の相違に着目しながら互いの考えを話し合うことで、生徒は自分の考えの変容を自覚する。
実践の結果を以下に述べる。
文学作品の構成、設定をとらえる学習を繰り返すことで、生徒に自力で読む力がつき、内容の理解が進むようになった。また、中心人物やクライマックスの検討により、生徒は新たな視点や考え方を獲得し、自らの考えを広げたり、深めたりすることができた。その際、ホワイトボード等にメモをとり、互いの意見や新たな気付きといった話合いの過程を可視化することが話合いの活性化につながった。互いの意見に対する考えを述べ合ったり、新たな意見を出し合ったりする姿が見られるようになったのである。