子どもたちは「AかBか」の選択を迫られる場面になると、両者を十分に検討することなく安易に決めてしまうことが多い。また、決めた理由についても説明することができない傾向がある。
そこで、様々な観点から論理的に考えを検討していく「批判的思考力」を身に付けさせ、問題解決を図っていかせることが必要である。自分の主張を根拠を示しながら相手に伝えるとともに、相手の主張に耳を傾け、両者の考えを多角的に検討する。このような力を身に付けさせていくために、本実践では以下の仮設を立てて検証を行った。
①ディベートの手法を用いたゲーム的要素のある討論会を行うことで、自らの立場や根拠を明確にして相手に伝えようとする表現力が向上するであろう。
②テーマに対して「肯定」「否定」の両方の立場からの主張を書くことで、多角的に検討する力が育つであろう。
本実践の討論会は、一般的なディベートをシンプルにアレンジしたものであり、肯定派4人、否定派4人、ジャッジ2人という10人グループを作り活動した。ジャッジの判定基準に「話し方(『~ですよね』『さっき~といいましたよね』など、聞き手を引き込むような話し方)」や「資料・根拠の確かさ、わかりやすさ」などの4点を示した。このディベート的な活動によって、次の成果が見られた。
①自分の立場の意見だけでなく、反対の立場からも意見を書くことができるようになった。(視点変換の力が向上した)
②意見にふさわしい根拠を資料や体験などから選択して話したり書いたりすることができるようになった。
③反論を予想することで、討論会の際には相手の意見に耳を傾け、質問したり反論したりする姿が見られるようになった。
一方、聞き方の指導とジャッジの仕方の2点が課題として残った。ジャッジの得点基準を明確にしたり、話し方と同様に聞き方にも視点を示したりと、今後も改善を加えてよりよい実践にしていきたい。