<研究テーマについて>
高学年の「書くこと」においては、目的や意図に応じて、書く事柄を収集・整理し、自分の考えが明確に伝わるように文章全体の構成の効果を考えながら適切に文章を書く力が求められている。しかし、児童の実態を見ると、読み手や目的をあまり考えずに書く事柄を並べ、文章全体の段落構成も意識せずに書いている児童が多い。
そこで、本研究では、「課題設定・取材→構成→記述」のそれぞれの段階で、書く相手や目的に照らし合わせ、目標を達成しているかどうかを吟味する推敲活動を行う。推敲活動を行う際には、学級の「共通のものさし」が必要になる。それぞれの段階で、共通のものさしとなる「推敲の観点」を明らかにし、その観点に沿って推敲することで、目的や意図に応じて書く力を付けることを目指す。
<研究実践の概要>
5学年、意見文を書く単元において、上記の研究の視点で実践を行った。
○単元名 「立場を明確にして書こう~先生からの提案 マンガ禁止」
○三段階の推敲について
(1) 課題設定・取材段階での推敲
教師自作の意見文「マンガ禁止」に反論する意見文を書くという目的意識をもたせた。児童は、教師の意見に反論するために、多くの理由を考えた。しかし、児童が考えた理由全てが説得力のあるものではない。そこで、取材段階では、「教師を説得できる理由になっているか」を推敲の観点とし、3人組で相互推敲を行わせた。友達と推敲し合う中で、友達の意見も取り入れながら、より説得力のある理由を選ぼうとする姿が見られた。しかし、観点があいまいな面があり、推敲する児童の主観的な判断になりがちであった。
(2) 構成段階の推敲
構成段階では、教師自作の意見文から、児童に相手を説得するための工夫を読み取らせ、読み取った点を推敲の観点とした。推敲段階での推敲の観点は、次の2点。①序論(はじめ)‐本論(中)‐結論(おわり)の三部構成になっているか。 ②本論には、相手を説得するための事例(具体)が入っているか。この観点をもとに、まずは1人で、意見文の構成を構成メモ(※意見文の構成をメモ書きして図式化したもの)にまとめ、その後、3人組で相互推敲を行った。推敲の観点が明確かつ具体的であったため、相互推敲が有効に働いた。
(3) 記述段階での推敲
記述段階では、誤字・脱字等の表記、文の長さ、原稿用紙の使い方などが推敲の観点となる。教師自作のプリント(※児童が表記や原稿用紙の使い方等で間違えやすい点をあえて間違えた作文)から間違いを見付けさせて表記や原稿用紙の使い方に目を向けさせた。さらに、「見直しチェックシート」の観点に沿って、自分と友達2人の三重でチェックを行った。複数の目で見直すことで、自分では気付かない点に気付くことできるよさがあった。推敲するポイントが多すぎて、児童の実態に合っていない面があった。
今回の実践の成果と課題を踏まえて、次の実践では、「推敲の観点」を書く相手や目的と照らし合わせ、具体的かつ明確にし、できるだけ絞って示す。そうすることで、推敲活動がさらに有効に働くと思われる。