スポーツ界では、水泳の池江璃花子選手が起こす奇跡が話題になりました。彼女自身は「つらいときやしんどいときもあったけど、努力は必ず報われる。」と話していましたが、「努力」の言葉ですまされる話でなく、まさに「奇跡」だと感じています。退院後にプールで練習を開始したころは、やせ細った体で弱々しい姿でしたが、競泳日本選手権ではまだ完全ではないにしろ、泳ぎながらつく水泳独特の筋肉を腕や背中にまとっていました。
突然の病からの快挙に、シドニー五輪銅メダリストの田中雅美さんは、「璃花子ちゃんは、
才能以上に大切なものを見せてくれている。それは困難や試練に向き合う勇気。彼女の強さの秘訣は〝挑戦することを楽しむ〟姿勢にある。」と語っています。この言葉を聞いて、私は、はっとしました。彼女にとって泳ぐことを楽しむことが、どんな困難や試練でもそう思わせないほど、すべてに勝っていることに気付かされたのです。
もう一人、注目の的となっているのが、大リーガーで活躍の大谷翔平選手です。アメリカのベテラン記者は、「パンデミックが続く中、大谷は人々に笑顔と喜びをもたらした。まさに希望の光である。」と讃えています。大谷選手が目覚ましい成功を掴み取ったのも彼の努力はもちろんのこと、ロサンゼルス・エンゼルスのジョー・マッドン監督との出会いがあったからこそと言われています。二〇二一年キャンプの初日に、マッドン監督は大谷の起用の仕方について「今シーズンは〝ショウヘイ・ルール〟を作らない。ショウヘイには制限なくプレーしてほしい。」と宣言したのです。
これまでの監督は二刀流による疲労を心配し、登板日の前後は試合に出場させない制限を設けてきました。しかし、マッドン監督は前後の日のバッターとしての出場を許し、さらに投打で同時出場するリアル二刀流も解禁しました。マッドン監督は言います。「大谷は心から二刀流を楽しんでいる。楽しむことがどれほど成功の原動力になるか軽く見てはいけない。」と。
スポーツ界で躍動する若き日本人選手らの姿から〝挑戦することを楽しむ〟ことが何事にも勝ることを思い知らされます。そして、このことはアスリートに限ったことではなく、私たち教員の世界にも通じるものがあるのではないでしょうか。
さて、新潟中央東支部の会員の皆さんは、夢中になって挑戦していることはありますか。
〝挑戦することを楽しむ〟のはそんなに甘くはありません。日本を代表する二人が、本当の楽しさは日々の努力の先にあることを教えてくれています。ですから、「今の仕事や役割をとことん楽しんでいる。」と胸を張って言える人は、間違いなく輝いている人です。
私にも研究授業で大失敗し、諸先輩方に叱咤激励されながら、授業づくりに没頭した経験があります。今になって思えば、子どもと向き合い、授業実践を積んでいたころの自分は、挑戦することを楽しんでいたのだと思います。そして、その気持ちは今も変わらず、これからも挑戦し、学び続けていきたいと思っています。
ときわ会は、昔も今もこれからも〝挑戦することを楽しむ〟会員一人一人を応援し、支えていきます。
支部長 吉田 亨(上所小 63年度)