支部情報BOX

2022.03.12

新潟中央東支部

学校文化の共有を

私は小学校教諭として採用され、佐渡で教員生活をスタートした。続く二校目の勤務校は燕市の小学校であった。

燕市勤務の三年目。いわゆる六年間の「念書人事」が終わるので、次は自宅のある新潟市への異動を希望していた。

一月下旬だったか。給食中に校長に呼ばれ、こう問われた。

「伊藤さん。今、管理主事から電話があった。中学校国語なら新潟市に入れるそうだ。あなた、どうするね?」

私は一晩考え「お願いします」と答えた。

そして迎えた四月。新潟市内某中学校での勤務が始まった。

驚きの連続で正にカルチャーショック。例えば、次のようなことだ。

・学級担任以外に学年主任と学年副任(複数!)がいる。

・時間割に学年会が位置付き、全て学年で動くのが基本。

・校内で最も影響力をもつのは生徒指導部であり、その頂点には生徒指導主事が君臨!

・授業中、生徒はそう簡単には挙手しない。

・しかし、授業中と部活動中では生徒はまるで別人のよう。

・校内研修公開授業の授業者をくじ引きで決める。

(嫌気が差した私は毎回立候補)

しかし、中学校勤務に慣れてくるにつれ、小学校との違いの背景が少しずつ見えてきた。

中学校の職員室では、生徒の様子がよく話題に上っていた。「数学の授業でA君が元気なかったけど、どうかした?」「Bさんはこの頃いろんなことに手を挙げるね」などのように。

中学校は教科担任制のため、学級担任でも自学級の授業がない日がある。そのため、小さな変化を職員で共有しながら生徒理解を深めていくのだ。

また、自律した生徒と自治力の高い集団を育てる必要があることから、生徒会活動は極めて重要であった。体育祭などの行事も学年生徒会の活動も、「自分たちの力でやり遂げることができた」という実感を積み重ね、生徒の成長を促すことができる活動だからだ。

だから教員は生徒に任せる。お膳立てはするが、じっと待つ。このスタンスは、実は生徒指導の本質にも通じていた。

このような「複数の目で生徒を見ること」や「生徒を育てる意図的なかかわり方」は、中学校に限らず教育という営みには欠かせない大切な視点であった。

異校種に勤務して、私は初めて気付くことができた。

そしてまた、「同じ子どもと終日、とことんかかわれる」という小学校ならではのよさを、改めて思い出すこともできた。

中央東支部の会員は、幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校・高等学校・中等教育学校に勤務している。それぞれの校種がもつ素晴らしい学校文化。その文化を校種を越えて共有し、自校の実践に生かせることが、当支部の大きな強みである。その強みを生かす余地が、まだ残っているのではないか。実にもったいない。

さて、中学校勤務三年目の秋、校長から問われた。

「伊藤さん。あなたは小・中交流人事で中学校に来たんだが、次の異動で小学校に戻るかね?あなた、どうするね?」

このときの答えで、その後の教員生活が決まった。

 

副支部長 伊藤 雅人(上山中 59年度)