「勝海舟に学ぶ」
ときわ会新潟中央西支部 副支部長 柏木 茂幸 新潟柳都中学校(昭60年度)
新学習指導要領の実施、働き方改革等、教育を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。こんな時だからこそ、地に足をつけて子どもとしっかりと向き合うことが大切です。
関連して、子母沢寛の「勝海舟」から興味深い場面を紹介します。
以下は、勝が仲間と経済について議論している場面です。教員の資質、特に生徒指導に通ずるところでもあるので参考になれば幸いです。
「閣老に経済の考えがない。みんな育ちが育ちで苦労というがねえ故、やる事、なす事、人間の機微というに触れやしねえ。
え、人が何処かへ集まって、わいわい騒ぐ、どうゆう訳でそう騒ぐのか、これをとっくりと考えもせず、只、騒いじゃいけねえ、集まっちゃいけねえと禁ずるよ。
ねえ、禁ずる前に、この集まっている人間をどうしたら、満足させることができるかと、その工夫をちっともしてやらねえんだ。みんな、なにも伊達や酔狂で、わいわい言っているんじゃねえでんしょう。
こ奴をなんとかして満足させてやろうという工夫、つまりは、その人の身になる親切よ。こ奴がこれまでの政治向きには少しも無かったんだねえ。
禁止するのあ、一番世話が無くて容易(たやす)いが、それは、おのの馬鹿をさらけ出すような恥っかきだよ。
こ奴にとんと気がつかねえから物の値が上がろうが下がろうがその経済には頓着なく、あれもいけねえ、これもいけねえと、空論空策を立てるんだ。」
勝海舟(子母沢寛):第五巻
「こ奴(児童生徒)をなんとかして満足させてやろうという工夫、つまりは、その人の身になる親切よ。」この部分は、教員に必要不可欠な資質と考えます。
ときわ会の会員は、教員としての資質向上を目指して日々研鑽を重ねています。その大前提は「子どもとしっかり向きあう」ことだと思います。「あの先生がいるから明日も学校へ行く」そんな教師を目指して、ときわ会の仲間と共に真摯に研修を進めていきましょう。
最後に、勝の父、小吉が海舟らに教え残した歌を紹介します。
気はながく、心はひろく 色うすく、勤めは堅く 身をばもつべし