“これまでの私の水泳指導では、泳力別のグループに分け、技能の向上を目指した教師主体の一斉指導を行ってきた。そのため、児童の主体性や問題意識を大切にした授業づくりができなかった。また、水泳は水の中という日常にない環境で運動を行うスポーツであり、「浮く」「進む」「呼吸」などの複数の異なる技能の組み合わせによって成立する運動である。自分のイメージと実際の動きが一致しにくいため、自分の動きを的確に捉えることができるような手だてが必要となる。
クロールと平泳ぎを比べると、クロールのキックは上下に足を動かすことで、推進力と同時に浮力を生み出すことができる。一方、平泳ぎのキックは、後方へ水を押し出すため、浮力を生み出しにくい。そのため、平泳ぎでは、最も浮力を得られる姿勢である「伏し浮き姿勢」が身に付いていないまま、プルや呼吸の練習に移ってしまうと、児童は浮力を得ようとして、下方へ蹴る「あおり足」になってしまうことが多い。つまり、伏し浮き姿勢が身に付いているかが、平泳ぎの習得に大きく影響すると考えられる。
また、合屋(2013)のように平泳ぎの指導法は、「キック」「プル」「呼吸」の順番で示されていることが多いと捉えている。しかし、早い段階でプルの練習に移行してしまうと、手のかきで体を浮かせようとし、体を水面以上に引き上げてしまう。そうすると、伏し浮き姿勢を崩すことにつながり、浮力を得られなくなってしまう。そこで、「キック」「呼吸」「プル」の順番で指導することで、伏し浮き姿勢を保ちながら平泳ぎの習得につなげることができると考える。
新学習指導要領では、課題解決のためにペアやグループで、気付きや考えを伝えながら学習を進めていくことも詳細に示されている。また、運動のバイオメカニズムを大事にした指導を強調しており、「キックの後に伸びの姿勢を保つこと」「キックした勢いを利用して伸びること」など、伏し浮き姿勢の大切さも示されている。
そこで、本研究では、ペアでお互いの泳ぎを確認しながら練習することで、自分の動きを的確に捉え、泳力を高めていく姿を期待する。また、伏し浮き姿勢を意識したキックの練習に重点を置き、平泳ぎ指導の展開を「キック」「呼吸」「プル」の順番にすることで、伸びのある平泳ぎの習得を目指した。
なお、本研究は事前アンケートで13人中11人が25mクロールを泳ぐことができていたため、平泳ぎを中心に行った実践である。”,令和元年度”