“学習でのつまずきの多くは,受け取った刺激・情報を,自分が得意とする認知特性だけで知覚している。そのため,事象を断片的にしか捉えることができない。そこで,例えば目で捉えた視覚的な認知に,説明された音声や文字による刺激や情報を提供することだけでも,情報処理機能を高めさせ,生徒によりよい理解を提供できるようになった。
また,学力の診断はWISCのような知能検査,学習障害,発達障害だけに注目してしまいがちであるが,家庭と子どもの学習とを結びつけて考えることも大切であると考える。家庭はさまざまな経験を通して,認知を育む場である。親のネグレクトにより,多様な経験を学習する機会が失われれば,十分な認知力が育たない。さらに,経験不足は,他の子どもと比べ失敗する経験を多くもつことになり,無気力傾向や物事からの回避傾向を生じさせ二次的障害が起こり得る。つまり,家庭は行動特性に影響を与えている。
そこで,上の述べた背景を考慮した支援を授業に講じることを行い続けた。授業で直接体験の場を多く設定すること。間違い・失敗も認められる学習の推進。内発的動機付けを高め、やる気を生じさせる働きかけの推進。不登校等による学習空白や誤理解のフォローと学習の連続性の保証などを提供した。
上記の,最低限の学習支援に,「直観で答えないで理由を考え,かつ,自分の考えを語らせる活動の組織」をすることで,理科の学力,授業へ意欲・関心,表現力,コミュニケーション力,情緒の成長が見られた。
“,令和元年度”