小学校学習指導要領には「学級や学校の生活において互いのよさを見付け、違いを尊重し合い、仲良くしたり信頼し合ったりして生活すること」と記されており、「よりよい人間関係の形成」の重要性が示されています。本研究では冷たい関わり(冷やかす、押しつけるなど)が多かった学級で、問題意識を共有し、解決方法を考えさせながら取り組ませることで、温かい関わり(手伝う、声を掛ける、一緒に楽しむなど)ができる子を育て、よりよい人間関係を形成することを目的としました。問題意識の共有後、実施したことは大きく次の三つです。
①自分が受けたサポートとそのときの気持ちを振り返る場を設定する。
自分の生活をより良くしている要因の一つに友達からのサポートがあることに気付かせ、互いに助け合うことでより良い生活が送れるようになることを実感させました。
②サポート強調週間を設定し、学級全体のサポートを分類させる。
自分が受けたサポート、自分が行ったサポート、そのときの気持ちをカードに記録させました。カードを集約し、学級にはどのようなサポートがあるのか、どんな気持ちになるのかを示して、サポートを分類させました。
③自分が受けたサポートと感謝や喜びの気持ちを伝える場を設定する。
学級終会(帰りの会)に「今日の振り返り」というコーナーを設定し、1日に6~8名ずつ自分の受けたサポートと感謝や喜びの気持ちを伝えさせました。子どもを曜日ごとに割り当て、1週間で全員が発表するようにしました。伝えることがない場合はパスを認め、「パスします」と言えばよいこととしました。また受けたサポートとそのときの気持ちを忘れないようにメモできるサポートカードを用意しました。カードは1枚に6回分のサポートが書けるようになっており、1枚終わるごとに振り返りを書かせて提出させました。振り返りには教師からの励ましのコメントを記述して本人に返却しました。受けたサポートとそのときの気持ちは一回分ずつ切り離してサポートを行った子に渡すことで、受けた子からの感謝や喜びの気持ちが伝わるようにしました。
このような取組の結果、冷たい関わりが減り、温かい関わりが増え、男女や仲良しグループなどの壁を越えて人間関係を形成するきっかけをつくることができました。また「うれしい」や「ありがとう」など感謝を言葉で伝えにくい子でも、カードに書くことで温かな関わりができることも分かりました。しかし、「手伝う」や「物を拾う」といった物理的なサポートが多くなってしまったので、もっと「声を掛ける」や「一緒に楽しむ」といった情緒的なサポートが増えると人間関係はより良くなると思います。