「歌唱における音楽表現を工夫する」とは、曲の特徴にふさわしい音楽表現を試しながら考え、どのように表現するかについて思いや意図をもつことです。私は「子どもたちは、友達と関わりながら、試行錯誤することを通して、自分の考えを強化したり新しい視点を手に入れたりすることができる」と考え、3つの手だてを講じ、実践を行いました。
1 学習の見通しをもつためのモデル提示
不完全なモデルを提示すると「もっとこうするといいよ。」とアドバイスすることを通して、自分が何を考えればよいかが明確になりました。また、2つのモデルを提示して比較しながら意見を交換すると、多様な考えが認められ、自分で考えをもつときの参考になりました。ねらいに合ったモデルを適切に示すことで活動への見通しをもたせることができました。
2 付箋を用いたワークシートの工夫
まず、自分で考えを付箋に書き込ませ、その根拠をワークシートに書かせました。その後、付箋をグループワークシートに貼り合わせながら、話し合う手法をとりました。色違いの付箋を使うことで、誰がどんな考えをもっているかが一目瞭然となり、友達と同じ考えをもっていることや同じ場所に注目しても考えが異なることなどが可視化できました。
3 友達の考えを取り入れて試行錯誤する場の設定
個からグループへの話合いへと移るときに、考えを書いた付箋のみを貼り合わせ、根拠は自分の言葉で話すようにしました。全部書いて示すよりも、お互いの話を聞き合う必要性が生まれ、「では、その考えを試してみよう」という流れが自然にできました。
これら3つの手だては、低学年でも高学年でも有効であり、試行錯誤しながら音楽表現を工夫することができました。しかし、このような話合いをするには、学級に共通の「音楽のことば」が必要になります。日々の授業の中で、たくさんの言葉と感性を共有化していくことが肝要です。今後とも実践を積み重ねていきたいと思います。