ずれを生む問題の提示により問題意識を醸成し、学習課題をつくり調べて、話し合って問題解決をします。しかし、一面的な理解にとどまり、子どもたちは分かったつもり、知っているつもりの状態で特色や本質的な意味に迫らせることができずに単元が終了してしまいがちです。この課題は予想や問いを調べた事実に対する自分なりの考えを「吟味」する過程がないままにまとめに至ることにあると考えました。そこで、学習過程に問い直しを位置付けることでこの課題を解決したいと考えました。
予想したことや調べた事実を異なる立場からの見解や複数の立場の関連から問い直し、社会的事象の特色や意味を多角的に考えさせる方法を探りました。具体的な方法は次の二点です。
1 学習過程での問い直しの位置付け
【問題-学習課題-自分なりの考え】の後に【問い直し-判断-解決】を位置付けます。
2 問い直しを促す発問・資料提示
調べた事実に対して、異なる立場や矛盾する事実を提示し、揺さぶりを掛けてそれまでの考えを問い直させます。これまで調べてきた事実に対して多角的な視点で検討し、社会的事象の特色や意味を理解させます。
実践1、6学年「願いを実現する政治」では駅設置要望に関わる複数の立場から働きかけを検討する中で、反対する立場から見て問い直しを行い、一部の住民だけではなく、より様々な立場の人たちの願いに基づき、行政・議会・税金が住民の願いの実現に向けた働きをすることを捉えさせることができました。
実践2、3学年「スーパーマーケットのひみつ」では販売側の工夫を「誰にとってのことなのか」問い直し、整理させることで、消費者からの視点に気付き、消費者の願いに応える工夫が集客につながっていることを説明させることができました。
この二実践から調べた事実に対して、新たな情報や異なる立場からの見解や矛盾する事実を提示し、児童に問い直しを促すことで、複数の立場の関連に気付かせ、社会的事象の特色や意味をとらえさせることができることが分かりました。