新しい題材に取りかかると、美術が好きな生徒、得意な生徒は意欲的に取り組むが、美術に苦手意識があったり意欲的でなかったりする生徒は、発想のアイディアスケッチなどの段階で安易にインターネットなどを使って検索し、得られた画像とほぼ同じものを描いていることが少なくありません。そういった経緯を経て作品に採用された案は、制作が進んでも見直されることはほとんどなく、発想や構想に深まりや練り上げが不十分なまま作品となってしまいます。このように主題の追求が授業で十分に行われていない状態では、発達段階においての学びが不十分であると感じます。創造的な技能を働かせて実際に形にしていく中で発想や構想を再度見直したり、構想を練る中で新たな表現方法を考えたりする学びが大切です。つまり、発想、構想は制作の初期段階ではもちろんのこと、生徒が自分の作品に納得し完成を迎える時まで継続して深めていくものと考えます。そこで、制作中も意図的に見直しの活動を取り入れていくことで、生徒が最後まで試行錯誤して考えを深めていくことができるのではないかと考えました。
そのため「表現の活動において、制作活動の間にワークシートの活用や相互鑑賞を通して、自分の主題や造形的要素の観点から作品について継続的に見直しをしていくことで完成まで発想や構想を深め、表現を工夫し続けていけるだろう」という研究仮説を立て、自分の作品を継続的に再確認する場面を設定し、手だてを講じました。
具体的な手だてとしては次の2点を講じました。
手だてa;振り返りの際に自分の考えの変容をワークシートに記入していく活動を行う。
手だてb;グループで相互鑑賞を行い、仲間の意見から新たな視点を見付け、主題の再確認を行う。
自分の作品の変容を自覚させたり、主題に近付いているかどうかを確認させたりするため授業の最後に振り返りを行うようにしたことにより、様々な表現方法を試し、試行錯誤するなど自分の作品をより深く追求する生徒が増えました。授業中の教師への質問も主題に向かうためにどんな表現をしたら効果的かなど具体的なものとなりました。これからも生徒がもつ力を十分に引き出せるような方策を考えていきたいと思います。