教育データベース

2019.03.12

特別支援教育

下越

平成30年度

言語障害通級指導教室におけるマルチメディアデイジー教科書を用いた音読指導

村上市立村上小学校 八藤後和男

 言語障害通級指導教室で指導する児童の中に、聴覚的なワーキングメモリの弱さがあり、読む箇所を正しく目で追うことができないため、読み誤りや読み飛ばしが多い児童がいます。本実践では、個々の能力の底上げを図るとともに、読みの困難さを代替する手段を活用することで、読み誤りや読み飛ばしを減らしたいと考えました。解決に迫るための手だては次の3点です。
① 対象児(A児・B児)の個々の実態把握から読みの困難さの原因を明らかにする。
② 個々の能力の底上げを図るためのビジョントレーニングや特殊音節の読み書き指導
③ 読みの困難さを代替するためのマルチメディアデイジー教科書(以下デイジー教科書)を活用した音読指導
 本実践を通して、A児は、ビジョントレーニングに取り組むことで、形を正確に捉えて書き写す力が高まり、以前は苦手だった漢字練習に意欲的に取り組むようになりました。また音読指導では、デイジー教科書の音読にかかった時間と紙の教科書の音読にかかった時間を比較することで、「ちょっと速かった」「もう少しゆっくり読もう」など読む速さを意識した振り返りを行うA児の姿が見られました。B児は、特殊音節の読み書き指導に取り組むことで、特殊音節の想起にかかる時間が短くなり、正確に書けるようになりました。また、音読指導では、B児からの要請でハイライトに合わせた音読する場面で音声を小さめに出力することにしました。B児は「『、』や『。』や空いているところでは一個休んで読む」と話し、それらの箇所で間を空けて読むことができました。
 以上の姿から、ビジョントレーニングや特殊音節の読み書き指導を通して、個々の能力を底上げすることができたと考えます。またデイジー教科書を用いることで読む速さをコントロールする力を高めたり、文章の内容の理解を深めたりすることにつながったと考えます。今後も、読み誤りや読み飛ばしを減らすための指導を継続し、在籍学級で存分に力を発揮する姿を目指します。