教育データベース

2018.11.09

小学校

体育・保健

新潟

平成30年度

視点の明確化・口伴奏が思考にもたらす効果

新潟市立早通南小学校 三宮 真澄

 器械運動の授業では、児童に「できない・難しい」という思いや「怖い・痛い」という恐怖感を抱かせないことが、運動に親しむ上で重要であると考える。特に、器械運動が好きではない児童が少なからずいる場合は、指導について工夫する必要がある。
 そこで、本研究では、マット運動が好きではないと答えた児童も主体的に学ぶことで、運動が「できた」と実感する姿を目指した。取り扱う運動は側方倒立回転につながる運動「大の字回り」である。目指す姿を実現するために、次の二つの手だてを講じた。

1 視点の明確化  
 大の字回りの動きを着手・回転・着地の三つの局面に分けた。また、三つの局面を「まず」「次に」「最後に」という言葉に合わせて絵と簡単な言葉で動き方を提示した。
2 口伴奏
 動きを見ている児童が、三つの局面に合わせて「(ギーコ、ギーコ)そ~おれっ!」とかけ声をかける口伴奏を取り入れた。口伴奏は以下のように行わせた。
  ①両手・両足を大の字のように広げて勢いをつける、準備の段階で「ギーコ、ギーコ」
  ②前の手から片手ずつマットに着手する「まず」の段階で「そ~」
  ③脚を高く上げて回転する「次に」の段階で「お」
  ④片足ずつ着地する「最後に」の段階で「れっ!」

 上記の手だてを講じたことにより、マット運動が好きではないと答えた児童が単元前の25%から9%に減少した。また、運動が上手にできると実感した児童の割合が向上した。アンケートより、がんばる(目標に向かって努力する)意識や決める(目標を自分で決める)意識が高まったことが分かった。児童は、口伴奏をしながら視点に沿って動きを見合い、アドバイスをしたり、アドバイスされたことを試したりしていた。学習カードには、自己の課題やその解決法についての記述が見られた。これは、児童の関わりの中から生まれた「思考」であり、がんばる意識や決める意識を高める結果につながったと考える。
 これらの結果より、視点の明確化と口伴奏は、思考しながら主体的に学び、運動ができたと実感させる上で有効な手だてであると考える。今後も、よりよい解決法に向けて友達と共に思考させる手だてを取り入れることで、主体的に運動に親しむ態度の育成を図りたい。