中学校では、数学が嫌いな生徒が多い、というイメージがある。実際 に「数学が好きか?」と生徒に聞くと、「証明があるから嫌い」「分からなくてつらい」という声があった。自分の担当クラスでは数学が嫌いな生徒が多く、授業改善の必要を感じた。
そこで、「数学が好き」と関連することを実行しようと、H30年3月に生徒のアンケートから実態を把握、参考文献等で研究されている項目をもとに問題点と仮説を考えた。
嫌いな理由のほとんどは、数学が分からなくて授業に参加できないこと、難しそうで面倒くさそうと感じること(数学ができる生徒も含む)であった。自分の指導を振り返ると、問題点は、その授業の目標が不明確であること、特定の生徒が発言するだけで、意見交換が少ないこと、生徒が達成度を実感できる機会が少ないこと、生徒の興味・関心を引き出すことが出来ていないこと、生徒が「分からない」を教師に伝えられないことだと感じた。
以上のことから、「数学の授業において、興味・関心を促しながら達成感を持たせる授業を続ければ、数学が好きになる生徒が増えるだろう」という仮説を立てた。
手だては以下の3点で、中学1年生の2クラスの好きの割合の変化と、抽出生徒の変容を調べた。
① 授業ごとに目標を決め、振り返りと自己評価を付ける。
② 興味・関心を促す授業実践を行う。
正の数・負の数の単元で、トランプを使った正負の計算ゲームを行った。複数のカードの合計を求めるときに、簡単に求められるように工夫した様子が見られた。また、「中学校の最初の計算がぱっとできて嬉しかった」という感想もあった。
③ 意見交換が活発にでき、達成感が得られる授業実践を行う。
文字の式の単元で、1列n個並んだ碁石の数を表す式を考える授業を行った。解答が何種類かあり、すべて見付けようとする生徒や、見付けた解答を班のメンバーに嬉しそうに説明する生徒の姿が見られた。
成果と課題
中学1年生の、「数学が好き・少し好き」と答えた生徒の割合は、4月63.9%から7月84.3%に上昇した。抽出生徒も「嫌い」から「少し好き」、「少し好き」から「好き」に変化した。このことから、手だては有効であったと考える。しかし、今後、関数や図形の分野に進むため、苦手分野がある生徒の好きの割合が下がることが予想される。それぞれの単元で実践②③のような授業を今後も行っていく。
<参考文献>「算数・数学教育学会誌『パピルス』第7号」/岡山理科大学 洲脇史朗
「教科の好き嫌い」/ベネッセ教育総合研究所