関数指導は数学教育の中核である。しかし、関数領域の学習に対して困難を抱える生徒は多い。現行の指導において、小学5年から中学1年にかけてスパイラルに「比例」の単元を学習する。また中学2年では一次関数の学習が始まり、関数を深く学習する入口ともなっている。本研究では、関数指導における小学校と中学校の現状を分析し、小学校から中学校への接続における子どものつまずきを、「変化と対応」の関係から明らかにした。そのつまずきに対するアプローチを一次関数の導入場面で具体化し、実践を行った。変化の割合に焦点を当て、生徒の学び合いを促進する思考ツールを活用し、生徒自ら考え方を見出す過程を経ることから小・中の接続をスムースにするという提案である。
1 変化の割合を自然と見出す課題の設定
小数値や離散値を扱った表を用い、変化の割合の考え方を用いなければ解決できない課題を設定した。比例的推論では解決できないため、生徒自らが変化の割合の考え方に行きついた。変化の割合は変化と対応を同時に見なければ考察できないため、小・中の接続に効果的に働いたと考える。
2 思考ツール「おでん型チャート」の活用
本実践では、自作の思考ツールである「おでん型チャート」を用いた。根拠や論拠を書くフレームワークを用いることにより、他者との考え方の共通点や相違点を見えやすくした。生徒自らが変化の割合を見出す展開に効果を上げた。
3 成果と課題
二つの手だてを用いることにより、生徒自らが変化の割合を見出し、小・中の接続をスムースにする授業展開を構成することができた。しかし、思考ツールについては、さらに学び合いを促進する活用方法を再考する必要がある。
<参考文献>
田村学、黒上晴夫(2017)田村学・黒上晴夫の「深い学び」で生かす思考ツール
礒田正美(1987)「関数の思考水準とその指導についての研究」『日本算数・数学教育学会誌』
礒田正美(1998)「関数領域のカリキュラム開発の課題と展望」、産業図書.
三輪辰郎(1974)「関数的思考」『Ⅴ 算数・数学における思考と教育』