幼小の接続について教育課程の接続という点に課題がある。学習指導要領や幼稚園教育要領では、幼児期の終わりまでに育みたい姿(10の姿)が示された。
そこで、今年度の1年生の実態から表出した10の姿を見取り、幼児期に育まれた資質・能力の発揮の様相を捉える。そこで得た知見を基に、過去の小学校1年生の授業実践を振り返える。10の姿を視点に幼児期に育まれた資質・能力を踏まえることで、児童期に育成を目指す資質・能力の設定やそれを育むための手だてを検討することができると考えた。
1 小学校での活動における10の姿の表出
平成30年度の第1学年の3学級の生活科の実践の中で、子どもたちは、各単元における課題解決のために、幼児教育で育まれた資質・能力を発揮しており、それぞれの10の姿は重なり合っている形で表出している。幼児期に育まれた資質・能力は、個々によって様々であり、小学校の実践においては、各教科の資質・能力が育成できるように、子どもの気付きや思考を、学習集団である学級全体に共有していく必要がある。
2 平成29年度第1学年算数・数学「ひき算(2)」の授業についての分析
本単元においても、いくつかの10の姿の表出を見取ることができた。生活科での見取りと同様に、子どもたちは、課題解決に必要な資質・能力を働かせている。算数・数学の本実践においては、それまでの小学校での学習の中で身に付けた既存の知識・技能を活用していることから、幼児期に育んだ資質・能力と共に、それを受けてこれまで小学校で伸ばしてきた資質・能力を発揮していると考えられる。
3 成果と課題
本研究の成果として、10の姿を視点に幼児期に育まれた資質・能力を踏まえ、目標となる資質・能力まで伸ばすことやそのための手だてを検討することが可能であると分かった。しかし、対象全体に関わる客観的なデータが十分とは言えないことが課題として残った。今後は、10の姿を想定して目指す資質・能力やそれを育むための手だてを設定した実践を行い、資質・能力に対応した評価を行い、資質・能力の伸びが見られたかについて検討できるようにしたい。