「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳」には、指導すべき四つの視点が示されている。さらにそれらの視点は、相互に深い関連があり、関連性を考慮した授業を行うことで理解は一層深まると明示されている。
私はこれまで、視点間の関連性を考慮して授業を行ってこなかった。そこで、授業の終末で、ねらいとする道徳的価値とは異なる視点との関連に気付かせる学習活動を組織することとした。具体的には、視点ABDをねらいとした授業に、視点Cとの関連への気付きを促す発問を行い、小集団で議論させた。
1 研究の実際
「視点Cへの気付きを促す発問→グループでの話合い→自己決定」を授業後半に位置付けることを研究の手だてとした。4年生2学級において、手だてを講じた学級と講じなかった学級とで比較した結果、手だてを講じた学級が、授業の最終記述に、ねらいとした道徳的価値に視点Cへの影響を含めて記述する割合が高くなった。また、授業前後における自作テスト(行動選択と根拠を記述)への反応の変化を2学級間で比較した結果、手だてを講じた学級が、行動選択の理由に、視点Cとの関連を記述する割合が高くなった。
そこで、さらに手だての有効性を検証するため、学校の異なる3学級で追試を実施した。結果、全ての学級で最終記述に、ねらいとした道徳的価値に視点Cへの影響を含めて記述する傾向が見られた。
2 成果と課題
児童は、視点Cとの関わりの中でねらいとする道徳的価値をより深く理解するようになった。さらに、一度視点Cとの関連に気付くと、その後も行動選択の動機として視点Cを記述する割合が高くなることも確認できた。本研究では授業のねらいとする道徳的価値に視点Cとの関連への気付きを促したが、今後は複数の視点がどのように関連しているか、また関連させることにより児童にどのような影響が見られるのかさらに詳細に検証していきたい。
<参考文献>
文部科学省『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』