オープンとクローズ
副支部長 中川潔(葛塚中 昭和61年度)
令和5年度を振り返ると、オープンとクローズという二つのキーワードが思い浮かびます。
オープンはこの一年、AIの世界で繰り返し使われたキーワードです。世界中で話題となったChatGPTや、令和5年7月にMETA社が開発したAI、LLAMA2(ラマーツー)はいずれもオープンソースソフトウエア(以下OSS)です。OSSは誰でも自由にダウンロードして利用できる上に、複製、改修、再配布することもできます。これにより、世界中の優秀な技術者や企業が継続的に開発、改修に加わり、時代に合わせた機能追加や、スピーディーな改修を可能にしています。
AIの世界でオープン戦略が功を奏したのに対して、日本ではクローズな組織の問題が、次々に明るみに出ました。株式上場せず、前社長が株式を100%保有し、同族企業として外部からのチェックを受けることなく、長年に渡って性加害問題を隠し続けたジャニーズ事務所。舞台に出演するのは、全員が宝塚音楽学校の「未婚」の卒業生だけで(結婚する団員は退団)、外部の俳優は一切出演することがない宝塚歌劇団。日大アメリカンフットボール部は、悪質タックル問題を受け、日大OBではない「外様」監督が就任し、2年で、関東1部優勝など、成果が出始めていました。しかし、外様監督本人が契約延長を望んだにもかかわらず、3年で監督が交代し、再び日大OBが監督に就任し、クローズな組織に後戻りして、違法薬物問題につながります。いずれの組織も鎖国体質で、過去のやり方やブランドへの過信が強く、自分たちの組織をよりよくしよう、外部の力も借りて組織を改善しようという意思は全く感じられません。
その背景に失敗に対する見方の違いがあるように思います。クローズな日本の組織に共通していたのは失敗を隠そうとする隠ぺい体質です。失敗はあってはならないという思想から、もし起こったら徹底的に隠そうとするのです。では、オープンな組織はどうでしょう?根底には当然失敗はあるよ、という思想があります。だからOSSで世界中の人から失敗(バグ)を見つけてもらい、改修してもらおうとしているのです。
皆さんの学校はどちらの組織に近いでしょう?多様な人の批判を、改善案を受け入れるオープンな組織体質になっているでしょうか。CSが学校のダメなところを隠し、いいところばかりを見せる場になっていたら黄色信号です。