当学区の地域的特徴から大きな被害をもたらす災害として、地震、水害、原子力災害が挙げられる。また、家族構成では三世代家族が多く、主な通勤・高校生以上の通学先として、三条市や加茂市、新潟市の他の区と、いずれも川を越えていかなければならない地域がほとんどだ。
このことから、大きな災害が起こった場合は、高校生以上の生産年齢の方は帰宅が困難になり、地域は高齢者と中学生以下の子どものみになる可能性がある。
そこで、中学生が防災リーダー的な存在として、率先して地域を支える行動をとる意識を育てる必要があると考えた。この意識をはぐくむために、防災教育の中で、次の3点に取り組んだ。
1 過去から学ぶ
中越地震や新潟・福島豪雨に関する資料を展示している施設に行って見学したり、被災や救助にあたった方から当時の様子について話を聞いたりした。話の内容としては、災害発生時の様子、停電等で通信手段がない中で被害状況を把握できたのはなぜか、避難所生活の実際、復興過程で生まれた絆、発災前の備えなどだ。
また、正しい知識や判断力を身に付けるために、行政や救助、大学の教授など各分野の専門家からのお話もいただいた。
2 知識構成型ジグソー法による活動
今回の学習では、訪問先や専門家の対象数が多いことから、全校生徒を縦割りのグループにし、手分けをして学習した内容を他のグループに伝えたり、意見交換をしたりする活動を取り入れた。
異学年集団での学習は、リーダーシップとフォロアーシップ、自分が学んできたことを他の異学年の生徒に正しく伝え、質問にも答えられるように準備をするという責任感の意識を高めた。
3 地域に発信する
中学生に地域を支える意識を育てるには、地域から頼られている感覚を得ることが大切だ。一方、地域住民が中学生を頼りにするには、中学生が学んだ防災学習の内容について知り、新しい発見があったり、地域の防災訓練に多くの中学生が自主的に参加したりするときだ。
そこで、防災学習で学んだことや地域への提言を「防災ハンドブック」としてまとめ、学区内の全家庭に配布した。各小学校区の区長さんからのお礼の言葉をいただいたり、マスコミにも取り上げられたりして、自己有用感が高まった。その結果、今年度行われた南区総合防災訓練では、中学校区の防災訓練に多くの中学生が参加した。地域の方から、「中学生が参加してくれて頼もしい」との声もいただいた。