こんなふうに音楽を表現したいという「思い」があってこそ、情感あふれる音楽を奏でられるのではないかと考えている。そこで、生徒が「どうしたら、よりよい合唱に近づけるのか」という「共通の思い」をもった上で、よりよい合唱を練り上げていく手だてを講じていく。
現行の学習指導要領には「音楽的な見方・考え方を働かせた学習活動によって、生活や社会の中の音や音楽、音楽文化と豊かに関わる資質・能力を育成すること」が音楽科の教科の目標であると示している。その上で、新学習指導要領では、育成を目指す資質・能力として(1)「知識及び技能」の習得に関すること、(2)「思考力・判断力・表現力等」の育成に関すること、(3)「学びに向かう力・人間性等」の涵養に関することが示された。その中でも「思いをもつ」という観点から(3)の「学びに向かう力・人間性等」に着目して展開していく。
1 楽曲の背景と自分の思いとを重ね合わせる
音楽固有の雰囲気や表情、味わいなどを感じ取りながら、自己のイメージや感情の動きと音楽の構造や背景などとの関わりを捉えさせたいと考えている。新学習指導要領で「背景など」としているのは、歌唱分野における「歌詞の内容」も含んでいる。そこで、歌詞への共感を糸口に、自分の経験や心の揺らぎ等を重ね合わせながら、歌詞をより身近に捉えられるような活動を取り入れる。そのことで、誰かが書いた歌詞の旋律をなぞるだけの歌唱から、自分の思いと重なり合った歌詞の旋律に情感を込めた歌唱へと変わるのではないかと考えている。
2 客観的な変容の見取り
歌いながら客観的に自分たちの合唱を評価することは難しいのではないかと考える。そこで、録音・録画から客観的に自分たちの合唱を聴くことで、自分たちの合唱の変容に気付けるのではないか。また、変容があったことで、「思いをもって歌うこと」の味わい深さを実感でき、学びに向かう力をより育てることができるのではないかと期待している。
これら二つの手だてから、(3)「学びに向かう力・人間性等」へと迫っていく。