私が担任する学級は5年生10名、6年生8名の複式学級で、保育園からずっと同じ人間関係の中で生活している。学級外の人との関わりにおいては、自分から積極的に話しかけたり、自分の考えを表現したりすることに苦手意識を感じている児童が多い。加えて、互いをよく知っているために、少ない言葉でもコミュニケーションが可能であることから、筋道を立てて論理的に他者に説明する力も不足していると感じてきた。
児童の抱える課題を解決するためには、新学習指導要領でも求められる「対話」が有効であると考えた。児童が自ら、課題解決に向けて周りの人と話し合ってみたいと思うような必要感のある対話の場を設定し、学級や学校の枠を超えて様々な人と関わらせることで、自分の考えを意欲的かつ論理的に表現する力が育つのではないかと考えた。そこで、以下のような手だてを講じた。
1 地域を題材にした課題と多様な他者と交流する場の設定
阿賀町は人口の減少が進み、高齢化率が非常に高くなってきている地域の現状がある。児童は昨年までの総合的な学習から、愛着のある阿賀町の現状に触れ、抱える問題の大きさに驚き、自分たちでなんとかしていきたいという意識をもった。そして町のことを考えていく中で、他校の人や町の人が地域のことについてどう思っているのか、その視点が重要なことにも気付き始めている。そこで、誰と話し合えば課題が解決できるのかを問い、多様な他者と交流する必要性を理解させた。それにより、他者とかかわる必然性と、学習課題を解決したいという意欲をもたせることができると考えた。
2 ファシリテーションにおける根拠の視覚化
今までは自分の意見を発表する際に、どのように言えば自分の考えが伝わるのか、話の組み立て方に自信がもてない児童が多くいた。とりわけ総合学習のように、課題に対して答えが一様ではないものについては、顕著にその様子が表れた。
そこで、表現する際の根拠が明確になるようにファシリテーションのやり方を工夫し、自分が意見を述べる際に同じ紙面上に根拠が見えるように工夫した。議題を二つ用意し、議題①の内容を根拠に、議題②の内容を検討できるようにした。
具体的に、議題①は、「阿賀町のいいところ/阿賀町のもっとこうだったらいいと思うところ」など、対応する質問をする。その理由として考えたことを付箋に書き、KJ法でまとめる。(根拠)
議題②は一番検討させたい項目、例えば、「将来どんな阿賀町にしていきたいか」と議題②を設定する。その根拠として、周りにある議題①の検討内容を使用するようにする。
このように、議題①で考えた根拠をみえるように工夫することで、論理的な発表の支えになると考えた。
以上の2点を手だてとして、自分の考えを表現する力を育成したい。