現行の学習指導要領では、教科横断的な学習や探究的な学習を通して、「生きる力」を育成することが目標の一つとして示されている。その目標達成のために、各学校では、地域に根ざした特色ある教育プログラムを作成し、様々な実践がなされている。当校でも、子どもたちが自分の住む地域や自分の学校を自慢に思える教材や指導計画を工夫することで、子どもたちの自己有用感を育てたいと考えた。
当校では、今から40年前、創立百周年の折に、卒業生から百本・五種類の桜が寄贈された。校庭を囲むこの記念樹は「百本桜」「五色桜」と呼ばれ、子どもたちは入学時からこの桜に親しみ、桜の見守る中で、育ってきた。しかし、これらの桜が校庭にある経緯や、その数や種類の意味を知っている子どもは少なかった。そこで、私は、この校庭の桜を柱とした学習を行うことで、地域のよさを再発見し、学校や地域を大切に思う気持ちをもたせることができると考え、次の二つの方策で実践を行った。
1 子どもたちの願いを生み、その願いに基づいた単元にしていくこと
子どもたちは、満開の桜の下で本数を数えたり、種類を確認したりする活動から、校庭の桜の由来について詳しく学びたいという願いをもった。そこで、地域の桜を守る会の方から学校の桜の歴史や寄贈された方の思いを聞き、地域と学校の深いつながりを知ることができた。秋には、校区内にある長岡造形大学のオープンキャンパスを発信の場として、これまで学んできた自慢の桜のことを多くの人に紹介することができた。
2 寄贈された方や、今、桜を守る方々の思いを知る中で、子どもたちの自己有用感を育てること
地域の桜を守る会の方から、桜を寄贈された方の話を聞き、桜に込められた愛校心、そしてその気持ちに賛同した地域の人々が未来へ託そうとした願いに気付くことができた。地域の人々がどのような思いや願いをもって自分たちを見てくれているかを感じられる場面が少なかった子どもたちにとって、地域に見守られていると感じ、自己肯定感をもつことができた活動となった。
「身近にありながら気付いていなかった学校や地域の良さ」「当たり前だと思っていた学校や地域の特色がもつ価値」などの魅力を再発見する学習の在り方を、子供の姿を基に提案する。