これまでの私の「量と測定」領域における指導では、「①直接比較→②間接比較→③任意単位による測定→④普遍単位による測定」の四つの段階を踏まえ、①~③までの過程で測定活動を大切にしてきた。しかし、普遍単位による測定になると、普遍単位の量感を働かせて、適切に長さの見当を付けることができなかったり、測定計器や適切な単位の選択場面等で明らかに不適切なものを選んでも違和感をもたなかったりするなど、普遍単位が単に記号化され、その量自体が「大きさ」や「多さ」として実感できていない姿が見られた。それは、③における「身の回りの物の○こ分」という量感と、④における普遍単位を用いる「○㎝」という量感との間に大きな隔たりがあるため、子どもたちが普遍単位による量感を身に付けにくいためではないかと考える。そこで本研究では、第2学年「長さ(1)」の指導において、③→④への過程で重点的・意図的に以下の2点の手だてを講じることとし、任意単位で培った量感を用いて普遍単位の量感を身に付ける児童の育成を目指し、研究を進めた。
1 普遍単位の単位量「1㎝」や「10㎝」を任意単位(「普遍的任意単位」)とし、その「いくつ分」という考えをもとに長さを捉える場の設定
消しゴムなどを用いた任意単位の学習後、普遍単位「㎝」を学習する前に、その単位量である「1㎝」を普遍的任意単位「1ひかり」、さらにその10倍の長さを普遍的任意単位「10ひかり」とし、身の回りの物を任意単位として測定した時と同じように長さの測定を行う。
2 1㎝や10㎝の長さの感覚を実感として捉えるための道具の工夫
「1ひかり」や「10ひかり」という普遍的任意単位を用いて長さを測定する際、長さの感覚が実感できるよう、「1ひかり」「10ひかり」の長さの測定道具を使用する。
本研究を通して、児童は、普遍単位「㎝」への量感の移行がスムーズになり、1㎝のいくつ分や、10㎝のいくつ分という普遍単位「㎝」の量感を伴った見方を身に付けることができた。また、見当を付けるときに使いやすい長さがイメージしやすくなり、1㎝、10㎝という二つの量感を身に付けることができた。今後は、他の量の学習においても、子どもが量感を身に付け、働かせるために、普遍的任意単位を扱うことが有効であるかを検証していきたい。