協調性を保てない児童の言動を改善するために、4つの取組を行った。また、その取組で言動の改善が見られた後に、周囲の児童に対して、対象児童との関わりを促す授業を行った。この2段階の取組を行うことで、周囲の児童との人間関係の回復を図った。取組の内容は、以下のとおりである。
1 トークンエコノミー法を用いた。人に対してよい行動をしたときに、スマイルマークというカードを渡した。スマイルマークを貯めると、シールと交換できたり、学級で飼う新しい魚を選ぶことができたり、お楽しみ会をしたりすることができ。この取組によって、よい行動を意識するようになり、自然に適切な言葉や行動を選ぶようになっていった。
2 日常指導及びSST(ソーシャルスキルトレーニング)を行った。他の児童に不快な思いをさせる言動があったときに、活動の場から離して言動を振り返らせた。また、どうすればよかったかを考え、よいと思われる行動をロールプレイさせた。指導の直後は、行動が顕著に改善され、学んだことを生かそうとする姿が見られた。また、言葉を口に出す前に、少し考えてから言う姿も見られるようになった。
3 活躍の場を提供した。教師のお手伝いや活動の準備などで仕事を頼み、そのことについて帰りの会などでみんなに伝えながら褒めた。これを励みにして、意欲的・積極的に人のためになることをしようとする姿が見られるようになった。また、他の児童に仕事を譲れた行為を褒めるたところ、それを誇りに思って人に譲ることが抵抗なくできるようになった。
4 学校であったよい行動を保護者に伝え、家庭でもその行動を褒めるよう促した。この結果、褒められたことを嬉しそうに教師に伝える姿が見られるなど、自己肯定感の高まりが感じ取られるようになった。気持ちが安定し、優しい言動が自然に出るようになった。
これらの4つの取組による行動の改善を受けて、周囲の児童に対し対象児童への関わりを促す授業を実践した。
以上の2段階の取組によって、集団の中に入って一緒に遊びを楽しめるようになり、その友情関係を維持できるようになった。