体育授業において大切にしたいことは、児童が「その運動の何を、どのように身に付けるのか」ということである。そのためには、教師が、課題に応じた運動の取組方を工夫する課題解決的な学習を展開する必要がある。これが充実した体育授業は、児童自らがチームや個人の課題の発見、課題に向けた運動の場や練習方法を工夫し、グループでの活発な意見が飛び交うだろう。そして生き生きと学習することで、技能を高めていく。それは決して児童任せなのではなく、そこに至るまでに技能に対しての基礎的知識を基盤として、考え、工夫するための思考が発展していくからであると考える。
そこで、本研究では、ボール運動(キャッチバレーボール)と体つくり運動(ペースシャトルラン)の領域において、思考を発展させながら、技能を向上させる体育授業を求め、次の2つの手だてからその解決に迫った。
1 「関連付ける」「関係性を見付ける」「序列化する」3つの活動を、毎時間サイクルで行うこと
児童はその運動の何をどのように身に付けたらよいのか知識が十分ではない。そこで、教師から児童に、戦術的・技術的な気付きに必要な新たな知識や発問を与えた。そして、児童にこの新たな知識と既習の知識を組み合わせて、作戦や練習方法を考える時間を与えた。このように知識を関連付け、組み合わせて考える活動を3つに分類し、「関連付ける→関係性を見つける→序列化する」ことを、毎時間サイクルで繰り返した。すると、児童は作戦や練習方法をより高次なものにし、思考を発展していった。
2 ゲーム様相や身体への気付きの発展段階を想定した学習内容の単元計画を設定すること
より思考を発展させていくためには「何について考えるのか」「どのように考えるのか」「何を結び付けるのか」の具体的な発問が重要であると考えた。そこで、キャッチバレーボールの単元では、ゲーム様相の発展段階を想定し、単元計画を立てた。例えば「ボールコントロール」と「アタック」の動きを結び付ける=攻めを組み立てる段階などである。
ペースシャトルランでは、身体への気付きの発展段階を想定した。「ペース」→「リズム」→「フォーム」を身に付ける段階を想定した。
これらの段階に合わせた課題をそれぞれの単元で設定し、指導した。
これら2つの手だてにより、児童は、毎時間学ぶべき内容を明確に捉え、思考を発展させながら、技能を向上させていくことができた。