児童は、他との交流など様々な経験によって形成された見方や考え方を使って表現や鑑賞を行う。しかし、それらの経験が不十分だと、作品に対し「描き方が上手」「本物みたい」などの表面的な見方や考え方しかできない。
そこで、児童に身近な地域素材を題材に取り上げた。児童同士の対話を整理しながら、児童なりの見方を引き出すとともに、地域の人が自らの経験を示したり語りかけたりする場を設定し、児童に対象を見つめ直させることにした。このような鑑賞や対話を経験させることで、児童は多面的、多角的な視点で対象を捉え、新たな見方や考え方をつくり出し、表現の思いを共有することができると考えた。本研究では、以下4点の手だてを講じた。
1 「大漁旗」や「波の写真」を鑑賞して、感じたことや考えたことを言語化させる。児童が言及した部分を指で指し示したり、他の児童の発言とつないだりしながら、発見を協働で積み重ねる場を設定する。
2 題材のことをよく知っている人や思いをもっている人と対話して心情に寄り添うことにより、地域の人の目線に近付けさせる。
3 児童が形や色から捉えたことやイメージを言葉にさせ、児童が気付いたところを教師が指で指し示すことで「見える化」し全体で共有する。
4 地域イベントで発表し、地域の人に認めてもらう場を設定する。
児童は、これまでの表面的な見方や考え方だけでなく、「思い」といった見方や考え方ができるようになった。児童同士の交流の場では、友人の作品から思いを読み取ろうとする姿を見ることができるようになった。また、普段の生活や図画工作科の学習においても、表現の思いを考えながら鑑賞や表現を行うようになった。
他の題材を設定したとき、どのように地域の人と交流させればよいか、検討が必要である。また、他学年において、この手だてが有効であるか今後も研究していく。